
オペレータ不足やAIと人間の差別化、顧客ロイヤルティ獲得という課題を解決するために、有人対応の改善に励むカスタマーサポート部門は少なくありません。
一方で「電話離れ」が進み、AIパーソナライズが進化している中で、コンタクトセンターが優先すべき取り組みは、本当に有人対応の質と効率アップなのでしょうか。
この記事では、「セルフサポート」に注目しつつ、セルフサポートのニーズや、AIによるセルフサポート強化時に取るべき3つのアプローチ、そしてそのアプローチに当てはまるソリューションを紹介します。
▼この記事が解決するお悩み▼
AIによる顧客対応を強化したい
ユーザーが求めているサポートを柔軟に提供したい
ボイスボットやチャットボットは導入しているものの、顧客満足度や自己解決率が上がっていないように思える
高まるセルフサポートのニーズ

これまで、オペレータ不足の対策や、ダークパターンの誤認対策、365日24時間対応やシニア対応の一つとして、セルフサポート(FAQやチャット、ボイスボットなど)の強化が強調されてきました。
コンタクトセンターとユーザーのそれぞれに高いニーズのあったセルフサポートですが、近年では顧客側のニーズがますます高まっています。
セルフサポートのニーズが高まる背景には、固定電話所持者の減少や、スマートフォン利用者の増加、コミュニケーションの変化などに加え、「若者は電話自体を嫌う」というマイクロトレンドがあります。
カスタマーサポートにおける電話のニーズが徐々に減少しているのです。
例として、株式会社トランスコスモスの「消費者と企業のコミュニケーション実態調査2023−2024」では、テキストコミュニケーションの利用率が増加する一方で、電話の利用経験率が7年連続で減少するという結果が出ています。
電話、チャット、ビデオ電話の各チャネルに対し、利用経験率と利用意向率を比較し、そのギャップを明らかにした調査では、電話では意向率(46%)が経験率(66%)を下回りました。逆にチャットとビデオ通話においては、意向率が経験率を上回る数値が記録されています。同調査では、この結果について「消費者のニーズに対し、企業側の環境整備・供給が追い付いていない」と分析されています。
さらに別の数値を見ると、セルフサポートによる自己解決率の向上が伺えます。
「97%の消費者はまずWebサイトやSNSを利用して情報収集」を行うようになっており、その上で78%のユーザーが自己解決を図っているというのです。加えて、FAQやチャットボットといった自己解決ツールの組み合わせにより、自己解決率が60%程度まで向上しています。
一方で、「自己解決に失敗すると、6割が継続購入を考え直す」という調査結果も出ています。チャットなどによるセルフサポートでの自己解決を促しながら、顧客体験や満足度を低下させないためには、「確実に解決できること」が必須条件なのです。
AIによるセルフサポート強化時に取るべき3つのアプローチ

これからのセルフサポートはAIの活用がポイントとなります。ここからは、AIによるセルフサポートに潜むリスクを回避するための3つのアプローチを解説します。AIを使用したセルフサポート強化時には必ず押さえておくべき要素です。
① サイレントカスタマー防止策
NTTコム オンライン・マーケティング・ソリューション株式会社が公開した「業界別NPSベンチマーク調査」によれば、顧客の約8割はサイレントカスタマーです。
中には、「サイレントカスタマーは顧客の9割を超える」という説もありますが、いずれにしても非常に高い割合でサイレントカスタマーが存在するという結果に変わりはありません。そして同調査では、サイレントカスタマーは概してNPSが低い傾向にあり、ロイヤルティが低いという分析結果が出ています。
企業の信頼度や顧客満足度の維持向上、機会損失の防止や売り上げ向上、ロイヤルティ獲得のためには、サイレントカスタマー防止への取り組みは必要不可欠です。
セルフサポートツールをすぐに使える環境を提供したり、ツールのデザインや操作性をシンプルなものにしたりすることが有効策となるでしょう。
② 顧客ニーズに応じたパーソナライズ
FAQやチャットボット、コミュニティサイトなど各セルフサポートツールが充実していても、以下のような要素があるとユーザーはストレスを感じ、満足度やロイヤルティ低下を招きます。
- 質問しても適切な回答が案内されない
- 定型的な質問や回答しかない
- 複雑/曖昧な質問に対して正確な対応がされない
AIによるセルフサポートだからこそ、顧客ニーズに応じたパーソナライズが可能であり、その活用が重要です。
今後はパーソナライズのために、顧客情報をより多く得て、活用していく「パーソナルコンテクスト施策」(※)が必要となってくるでしょう。
パーソナルコンテクストとは:カスタマーサービスにおけるパーソナルコンテクスト(Personal Context)とは、「お客さま専用AIサービス」を提供するために必要な個々の背景情報のことです。Google I/O 2025でも注目されるようになりました。
※パーソナルコンテキストと呼ばれることもあります。
③ 有人対応へのスムーズな接続
冒頭で言及した「消費者と企業のコミュニケーション実態調査2023−2024」によると、問題発生時に自己解決できた場合のリピート率は85%が記録されており、やはり自己解決ニーズが高いことは明白です。
一方、自己解決ができなくとも、スムーズに有人対応へ移行して解決できれば、リピート率は81%です。そして、仮に手間や時間がかかったとしても、親切・丁寧な有人対応でリカバリーして問題解決できれば、77%のリピート率を維持できます。
AIによるセルフサポートといえど、カスタマーサポートにおける最後の砦は有人対応であることを忘れないようにしましょう。どのようなチャネルからでも、スムーズに有人対応へ接続できるようにしておくべきなのです。
セルフサポート強化に効く「Bright Pattern」のAIコンタクトセンタースイート

ここまでで、サイレントカスタマー防止策、顧客ニーズに合わせたパーソナライズ、有人対応へのスムーズな接続といった3つのアプローチについて解説してきました。
ここからは、各アプローチを実施するのに効果的なソリューションを紹介します。AIコンタクトセンターシステム「BrightPattern(ブライトパターン)」の最新機能「AIコンタクトセンタースイート」について見ていきましょう。
AI搭載コンタクトセンターシステム「BrightPattern」は、顧客が話した音声や、打ち込んだテキストといったパーソナルコンテクストを理解し、相手にぴったりのサポートを提供します。
AIによるメール、SMSの自動生成
AIコンタクトセンタースイートでは、顧客一人ひとりに合わせたメッセージを生成・送信できます。AIパーソナライズを実現できるのです。カスタマーサクセスにおいて強力な一手となるでしょう。企業から顧客へコンタクトを取るので、サイレントカスタマーの防止策としても効果を期待できます。
対話型IVR
Bright Patternの対話型IVRでは、従来のIVRのようなメニュー操作は不要です。そのため、オペレータへつながるまでの操作性が悪かったり、他部署のオペレータにつながり、たらい回しにされてしまったりといったリスクを回避できます。顧客のストレスになり得る要素を排除しつつ、サイレントカスタマー防止の観点からも有用です。
AI IVR
AI IVRはLLMを活用して対話型IVRを強化したものです。ユーザーの感情や意図を適切に理解し、自然な対話で最適解を提供するので、AIの自動応対にありがちな「機械感」や「不自然さ」を最小限に抑えることができます。また、内容に沿って適切なオペレータへエスカレーションできるので、スムーズに有人対応へと切り替え可能です。
最後に
自己解決ニーズの高まりと、セルフサポート強化の重要性、そして役立つソリューションについて紹介してきました。
「では、有人対応の品質や効率向上はあまり重要ではないのか」と思われるでしょうか。もちろん、有人対応の強化も依然として重要です。
どんなにセルフサポートが充実していたとしても、最後の砦として顧客満足度を左右し、リピート率を維持するのは有人対応だからです。迅速で的確な問題解決と、人間ならではの気遣いや「おもてなし」がカギを握ります。
顧客の最新ニーズに合わせて、AIによるセルフサポート強化をしながら、有人対応の強化にも引き続き取り組んでいきたいものです。
AIコンタクトセンタースイートは、セルフサポートと有人対応の同時強化を目指す皆様をサポートします。紹介してきた機能の他に、オペレータ支援や高度な分析に役立つ機能も搭載しています。その他の機能については、下記をご覧いただくか、ぜひ弊社までお気軽にご相談ください。