2021年、ウィズ・アフターコロナ時代のCX(カスタマーエクスペリエンス)はどうなる?

2021年 ウィズコロナ アフターコロナ カスタマーエクスペリエンス

まさに混乱と変化の年となった、2020年。
ロックダウンによって物流は混乱し、カスタマーサービスやショッピングなどのオンライン化が急速に進みました。
IBMが2020年に行った調査によると、コロナ禍でeコマースへの移行が5年ほど前倒しになったと言われています。
また、マッキンゼーは、コロナ禍の8週間でデジタルチャネルへの移行が加速し、こちらも5年前倒しになったと指摘しています。

こうした変化は、CX(カスタマーエクスペリエンス)にも大きな影響を与えています。クラウド型コールセンターシステムの導入が加速し、オペレータのリモート化が急速に進みました。

一連のエントリで、コールセンターはどのようにコロナ禍に立ち向かったのか、ウィズ・アフターコロナ時代はどうあるべきか、そしてそこでAIソリューションがどのように役立つか、ソフトウェアベンダーとの関係がかつてなく重要になる理由などについて掘り下げます。

 

AIでCXを向上させる

新型コロナウイルスの感染拡大に伴って、コールセンターの呼量は激増しました。
それが、人々の生活にどのような影響を与えているのか、コロナ禍で失業保険の申請が急増している問題を扱ったアメリカの60分番組の一部をご紹介しましょう。

 

アメリカ労働省の録音

自動音声 「ただいま大変込み合っています。今週の別の時間におかけ直しください」

ケイトリン・レイノルズ 「この2週間、毎日50回も電話をかけ続けてるわ!」

 

2週間前までケイトリン・レイノルズは、 ビジネス会議を主催する会社の副社長でした。
職を失うと同時に彼女は、オンラインで失業保険を申請。しかしその後、ニューヨーク州では申請の最終段階で電話でのやり取りが必須であることが明らかになりました。

「3月16日から毎日50回、失業保険のコールセンターに電話をかけ続けています。それなのに、まだつながらないんです。」

 

彼女だけが特殊な状況に置かれているわけではありません。コロナ禍のアメリカでは、何百万人もの人々が、銀行や保険会社、病院、その他主要サービスに電話をかけたもののつながらなかったという経験をしています。
アメリカだけではありません。
日本でも感染症電話相談のコールセンターに問い合わせが殺到してつながらない、感染予防対策のためにオペレータ人員が不足してつながらないといった状況が発生しました。

こうなると、かけ直しを依頼したり、「通常より待ち時間が長くなります」というお知らせを流したりするだけでは不十分です。
新しい形のセルフサービスやAIを活用してリモートで働くオペレータを支援し、CXの向上を図る必要に迫られています。

 

昨年来、多くの企業がAIに多額の投資をしているものの、戦略的な活用ができていないという現実が浮き彫りになっていました。
そのような中で発生したコロナ禍。
急増するインタラクションを処理するフロントラインツールとしてのAIの存在感がにわかに高まりました。
実際、AIプロバイダー最大手のIBM Watsonは、2020年2月から4月にかけてトラフィックが40%増加しました。これは、チャットボットや高度な会話型IVRといったAIツールが、洗練されていながらも実装が簡単で、広範なナレッジベースを素早く検索して複雑な問い合わせにも応対できることを明らかにしています。

一例として、Bright Pattern社は、呼量の50%以上を会話型IVRでトリアージできるよう複数の州で展開する小売チェーンを支援しました。
CX分野でのAIと新しい形のセルフサービスには今後も大幅な成長が見込まれています。なぜなら、これらは時の経過とともに進歩を続け、今後コロナ禍が収束し過去のものとなった場合でも、オペレータの作業負荷の軽減に役立つものだからです。

 

アフターコロナを予測する

「不確実」「未知」「混沌」「新しい日常」…どれも感染拡大時によく見たワードです。
では、状況が落ち着いたウィズ・アフターコロナの「日常」はいったいどのようなものになるのでしょうか。そしてCXにはどのような影響があるのでしょうか。
コロナ禍前のアメリカ経済をデータから読み解きましょう。

 

コロナ禍以前の数か月、アメリカ経済はかつてない活況に沸いていました。2月の失業率は3.5%と、歴史的な低水準を記録。個人消費が堅調であったことに加え、株式市場もダウ、S&P、ナスダックで、史上最高値を記録しました。
しかし、この堅調な経済がうまく企業のCXに反映されていたかと言えば…
残念ながら答えはノー。当時の経済界において、CXはすっかり蚊帳の外でした。

実際、すべての業界で、CXスコアは伸び悩んでいました。その原因の一つは、企業が安価でそれなりに良い製品やサービスを提供しており、消費者の受けもかつてなく良かったことにあると言われています。
つまり、業績は好調だし、CXもまぁそこそこ問題なし。であれば、わざわざCXにテコ入れする必要はないというわけです。

ところが、CXに注意を向けざるを得なくなるような数字が次々に登場します。
米議会予算局(CBO)によれば、4月には失業率が14.7%に上昇、消費者支出が17%も下落しました。さらにGDPが年率換算で38%減少し、3月16日にはダウが2997ポイントと過去最大の下げ幅を記録したのです。

 

こうした経済の落ち込みがコールセンターにどう影響したかを、CXスコアから読み解いてみましょう。
Forrester社の「US 2020 Consumer Experience Index」によると、過去1年間で27%のブランドがCXスコアを改善しています。
そして、その要因として「CXの専門家が(中略)顧客の心に刺さる体験を設計している 」ことをあげています。
言ってしまえば、消費が低迷したため、競合他社との差別化を図るために企業はCXに注力する必要に迫られたということです。

 

では、ワクチンが流通し、通常のビジネスが再開された場合、状況はどう変化するでしょうか?それは消費者の動向次第というしかありません。
オンライン取引に流れた客足は戻るのか。コロナ禍前の水準に雇用が回復したら消費習慣はどう変化するのか…確かなことは誰にもわかりません。
ただ一つ言えるのは、企業が今後もクラウド型コールセンターソリューションやAIのようなテクノロジーへ重点的に投資し続けるであろうということです。

 

今回のエントリでは、コロナ禍、そしてウィズ・アフターコロナのコールセンターをCXの在り方の解説と予測をご紹介しました。困難な時代を乗り切るために、CXを無視することはできません。
そして、先が見えない今だからこそ、泥縄的な対策を講じるのではなく、ベンダーやソリューションの選定をいかにスピーディーかつスマートに行なえるかが成功のカギを握っています。

次回エントリでは、ベンダーとの関係性の築き方から導入時期の見極め方の秘訣をチェックリストと共にご紹介します。
乞うご期待。